システム・サイトの保守を受ける方、エンジニアの稼働を契約する方へ保守と運用の約束を、
条文で線引きする
システムやWebサイトの保守、社内ITの運用、エンジニアの稼働を提供するSESは、毎月同じ相手との間で問い合わせ、作業、報告、請求が繰り返される契約です。けれども契約書を見ると、月額にどこまで含むのか、何時から何時まで対応するのか、障害が直らなかったら責任を負うのか、稼働時間が想定を外れたらどう精算するのか、発注者がエンジニアに直接指示してよいのか、契約が終わるときにアカウントやデータをどう返すのか、という保守・運用ならではの論点が並びます。このガイドでは、アトラス行政書士法人がこれまで作成・レビューしてきたシステム保守業務委託契約書、Webサイトの保守・運用契約、定額ITサポートの契約書、準委任型の業務委託基本契約と個別契約、エンジニアへの業務委託契約書の実例と、条文の一次確認をもとに、保守・運用を受ける事業者と、保守やエンジニアの稼働を外部に頼む事業者が、契約書で押さえておきたいことをテーマごとに詳しく整理しています。
システム・サイトの保守を受ける方

保守の範囲を、回数と時間と列挙で決める
「保守」は法律用語ではないので、定義がなければ受託者に不利に解釈されます。月額の範囲は、不具合修正は月1件・1時間までのように回数と時間で書き、軽微な調整や顧客の変更に起因する復旧は範囲外に列挙します。
保守は準委任で書き、無停止や一定時間内の復旧は保証しないと明記します。機能の追加を伴う改修は、請負として別に発注を受けます。
SLAと月額の決め方に迷う方

一次回答の意味と、上限を超えたときの料金
SLAは保証値にせず、目安や運用目標として書きます。一次回答は受付と方針の連絡であって、復旧の期限ではないと定義しておきます。
月額は体制を維持する対価とし、作業時間の上限を書いたら、報酬の条にも超過分の扱いを書きます。料金の改定は、申入れから終了までの手続で書きます。
SES・エンジニアの稼働を契約する方

精算幅と単価と承認の期限を、数字で決める
SESの契約は準委任で、月額と精算幅で稼働を約束する形が多くとられます。控除単価と超過単価をそろえ、稼働報告の承認には期限とみなし承認を付けます。
端数の切捨ての単位、実費の負担、支払通知への異議の期間も、毎月の受取額に直結します。従業員を使わない個人のエンジニアとの取引には、フリーランス法がかかります。
偽装請負が気になる方

誰が指示するかを、契約書で受託者側に固定する
発注者が受託者の従業者に直接指揮命令して働かせると、実態として労働者派遣に当たり得ます。発注者が示せるのは目的・仕様・納期の希望・セキュリティの要件までです。
要望は受託者の責任者を窓口にし、メンバーの選定・交代は受託者が決めます。常駐の必要性と範囲を個別契約に書き、勤務時間の管理を発注者が行う定めにしません。
定額ITサポートを始める方

月額内・重対応・別契約の三層に分ける
相談の内容が読めない定額のITサポートでは、月額の範囲を軽微な相談・短期の助言・確認の補助に限り、重い対応を別料金に、長期の案件を別契約にします。
重対応への移行は承諾を得てから行い、緊急時だけ暫定措置を先に行えるようにします。最初の1か月を試験運用の期間にする方法もあります。
アカウントと終了時の引継ぎを整えたい方

名義・権限・終わり方を、最初に決める
サーバーやドメインの名義と費用は委託者、受託者は貸与された権限で作業する、という分界を書きます。ID・パスワードを預からない招待方式も選べます。
終了時は、返還・削除は義務、移管・説明・データ移行は有償と線を引き、引渡しと削除の順序を決めます。一人で受ける保守は連絡不能のときの扱いも書きます。
このガイドの解説ページ
よくあるご質問
保守契約は、準委任と請負のどちらで書くべきですか?
日々の監視・問い合わせ対応・不具合の切り分けのような保守・運用は、完成を約束できる性質ではないため準委任で書くのが基本です。機能の追加や仕様の変更を伴う改修は、請負として別に発注を受け、その部分だけに契約不適合責任を適用する設計があります。
保守契約にSLAを書くと、責任が重くなりませんか?
保証値ではない目安・努力目標として書く、SLOと名付けて未達でも債務不履行にならないと明記する、SLAを置かずに一次回答の意味と保証しないことを書く、といった設計で、委託者の期待を調整しながら責任を限定できます。
SESの精算幅で、控除単価と超過単価は同じにすべきですか?
受託者の立場では同じにするのが基本です。控除を通常の1.1倍、超過を0.9倍とする非対称の案を、両方とも通常の単価と同額にそろえた改訂例があります。稼働報告の承認にも期限とみなし承認を付けておきます。
準委任の契約で、発注者がエンジニアに直接指示してもよいですか?
発注者が受託者の従業者に直接指揮命令すると、実態として労働者派遣に当たり得ます。要望・質問・修正依頼は受託者の責任者を窓口にし、発注者は勤務時間・勤務場所・具体的な作業方法を指定しない、と契約に書いておきます。
保守契約の終了時の引継ぎは、無償で行う必要がありますか?
契約で決めておかなければ争いになります。預かった資料・アカウント・データの返還や削除は義務とし、移管・引継資料の新規作成・他の事業者への説明・データ移行は別途有償とする書き方が中心です。
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運営事務所・ご相談のご案内監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日